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魔法使いの城。
山の奥深くに、魔法使い達の城があった。八人の賢者と魔法使いの頂点に立つヴァンデッドの姓を継ぐ者が一人。
十四年前、その近くの小さな王国の国王に、通りすがりの一人の預言者が言った。
「三日後、朝日が昇る瞬間に生まれた背に三日月の痣を持つ女の子が王を破滅に導く」
預言通りに生まれた子を、両親はつてを頼って魔法使いの城へと送った。死んだと偽って。少女は賢者とヴァンデッドによって男の子として育てられた。
そして今、最年少のヴァンデッド、リース=クラウディア、ヴァンデッド姓を継承。リスク=ヴァンデッドの誕生である。
「八人いた賢者も、今では二人を残すのみ…」
「ヴァンデッドがいる。リアン=ヴァンデッドが」
言われた老人は、声を出さずに体を揺らして笑った。
「私はもう年だ。千年近くも生きれば十分さ。それに今はもう…三十分前からヴァンデッドではない。リアン=ボーディアーだ」
その場にいる誰も、その名を知らなかった。彼はここ四百年ほど、ずっとヴァンデッドとして生きていた。
「私の代でヴァンデッドは終わると思っていた。しかしリスク、お前はまだ若い」
「別にヴァンデッドなんて要らないんだぜ、オレは」
やんちゃな孫を見るような目で、別の賢者が言った。
「我々は自分の持てる全ての力をお前に与えた。それをどう使うかはお前の自由だ」
その口調にいつもと違うものを感じて、床に敷いた丸い敷物の上に座っていたリスクは姿勢を正した。
ふたたび前代ヴァンデッド、リアンが口を開いた。
「好きにするがいい。この城のものは何を持って行っても自由だ。どこへ行くのも、何をするのもお前の意志だ」
「…オレ、追い出されンの?」
「いつでも帰ってくるがいい。我々が死ねば、城はお前のものだ」
「城なんか要らないからさ、リアン達、ずーっとここでオレを待っててくれる?」
三人の老人は笑みをもらしながら互いに顔を見合わせた。
「いいとも。出来うるかぎりの手を打って延命しよう」
十四年前、リスクが城にきたときすでに賢者は五人だった。世界は魔力よりも武力の時代になっていたのだ。
リスク=ヴァンデッド、本名リース=クラウディアはこの日、十四年ぶりに魔法使いの城を去った。
何しろ山奥も山奥、中庭の畑と狩りで生活をしていたのだ。リスクはまず自分の生まれた国を観に行くことにした。
十四年前は小さな国だったヴァントリア王国。外界と隔離された生活をしていたリスクは知らないことながら、預言者にリスクによって滅ぼされるであろうと言われた現国王ソルヴァス=ル=ヴァントーレの国外遠征により、三十もの属国を治める強国となっていた。
そして、国王は未だに十四年前に生まれた背に三日月の痣のある女の子を捜していたのである。
三日ほど森の中を歩き続けたリスクは、ようやく人里に近いところまできていた。
急に犬の声が近づいてきた。リスクはあわてて獣道から木立ちの陰に身を隠した。
吠えながら四匹の犬が一匹の鹿を追って行った。その後を騎馬が追う。どうやら大きな狩りが催されている真っ最中らしい。
自分と賢者達以外の人間をナマで見たのは初めてだ。思わずリスクはじっと目で追った。
ヴァントリア国の皇太子だ。
馬具についていた紋章と飾りを見てリスクは悟った。そういう知識は城の蔵書から山のように得ている。
参ったな、うかうかしてると鹿と間違えられそうだ。
そろそろと移動していたリスクに、一匹の犬が吠え掛かった。リスクは犬を睨つけた。
すぐに犬はおとなしくなったが遅かった。蹄の音が近づいてくる。
「どうした、アンバー」
犬の名を呼んだ馬上の人物は、がっしりとした体格の剣士だった。木の上からそれを見て、リスクはその剣士が見た目よりも若いのに気がついた。
「どうかしたのか? ツェルサーム」
男の名はツェルサームというらしい。連れのほうを振り向いた。
「いや、なんでもなかったようだ。行こう、王子に遅れを取った」
リスクは歩いて森から出た。気持ちのいいなだらかな広場に、仮設の調理場、屋根だけの日除けテント、笑いさざめく貴婦人達、主人の帰りを待つ犬達。そこには一枚の絵があった。
リスクは自分がその絵にそぐわないことをよく承知していた。古い型の服にくたびれたリュック。そっと通りすぎようとすると、背後で鋭い馬のいななきと女性の悲鳴が聞こえた。
振り向くと、一人の若い女性を乗せた馬が暴走してくる。女性は馬にしがみつくのが精一杯で、今にも振り落とされそうだ。
「カリヴァス・ユア・レイスローク、森の恵みよ夜の静寂に宿れ」
催眠の魔法。
馬はぴたりと立ち止まった。もともと立ったまま眠る動物だ。
それを見ていた人々が呆気に取られている間に、リスクは足早にその場を立ち去った。
その夜、野営場では魔法を使った少年のことが話題になった。当然といえば当然で、魔法使いがそこら中にいた時代はすでに遠くなって久しい。
「それで、どんな男だった?」
王子が好奇心で尋ねた。
「男というよりは子供でしたよ。少女ともみまごうような、線の細い」
本当に女なのだから当然だ。もっとも、遠目だった上に魔法を使ったということもあってどんな姿をしていてもおかしくはないという未知のものに対する思い込みがある。
さて、そのころ本人は今にも崩れそうな農家で粗末だが心のこもった夕飯を御馳走になっていた。
数十年前に息子が死んでしまったという老夫妻は、旅の途中のリスクを子供のように扱ってくれた。本当の親を知らないリスクは、ありがたく好意に甘えることにした。
「息子の服がたんすに入っているからね。好きなのを着なさい」
「何から何まですいません。あ、後片付け手伝います」
食事の後片付けを申し出たリスクに、二人は断わったが、お礼としてやらせてもらった。自給自足の生活をしていたので働くのは苦にならない。
「私らはもう墓の心配をするばかりだけどねぇ、あんたはまだ若いんだから世の中を見てきた方がいいよ」
「ええ、見に行くところなんです」
最初の服装が服装だったので、よっぽどの田舎者と思われている。本当だから仕方がないが。
良い人に会えてよかったと思いつつ、その夜、リスクは眠りについた。
次の日の朝早く、乱暴にドアを叩く音で目が覚めた。誰かがきたらしい。ベッドを出てそっとドアを開くと、老人の声が聞こえた。
「医者とおっしゃられても…十五キロ先の村まで行かんと…」
「それでは間に合わんのだ! まだらヘビにやられて…」
「なんですと! それはいつ?」
「三時間ほど前だ」
「ではあと二時間のうちに手当をしなければ死んでしまいますぞ」
「わかっている! だから医者を捜しているのだ!」
緊迫した声は、ちらりと見たあのツェルサームという剣士のものだった。あの身分の高そうな男が自分で医者を捜しているということは、死にかけているのはおそらく。
リスクはそっとドアを閉め、魔法で施錠した。そしてリュックの中から小さな革袋を取り出し、中を確かめた。
賢者のなかでも薬草に詳しかったセシオンに教わり、リスクが自分で調合した解毒剤。毒素浄化の魔法と併用すればどんな毒も消してくれる。
小さな村だ、またどこで王子に会うかわからない。厄介なことは避けたい。
要はオレだってわかんなきゃいいんだ。封印破り…か。しょうがない。人の命には替えられない。
「セ・ルース・ブラド・ヴァイン」
リスクの立っているところを中心に、半径一メートルほどの床が光った。下からサーチライトで照らされているような感覚。
「ヴァンデッドと力の紋章ルクシオンの名の下に、封印よ、一時我が真の姿を解放せよ」
焦げ茶色の肩を覆う長い髪が生き物のようにうねり、黄金に変わる。鳶色だったはずの伏せていた瞳は深いエメラルドグリーン。
これこそがリスク、いやリースの本当の姿。封印を施したのは前代リアン=ヴァンデッド。史上最高のヴァンデッドと呼ばれた前々代のヴァンデッドはリースの祖母に当たり、その姿と魔力を受け継いだリースの両方を隠し、人目につかないようにして更には女性であることと背中の三日月の痣を隠すために。
「さて」
呟いて、リスクはシーツを取って自分の頭からかぶった。
「キース・エーフ・デ・メトルファシース・ラシクス・エメル・ディオジーマ、天の理、地の理、光の理より我が身を解き放て」
風もないのにシーツが揺れる。その揺れが納まったとき、リスクの身体は移動していた。目の前には豪華な寝具。そこに横たわり、苦しげにあえいでいるのは皇太子。
やっぱり、か。
まぬけだなーと思いながら、リスクは革袋から薬を少しコップに入れ、枕許の水差しから水を加えて掻き混ぜ、皇太子に飲ませた。
半分意識のない王子は、リスクを侍女か部下だと思っているのだろう。おとなしくされるままになっている。
全部飲ませると、リスクは片手を王子の心臓のあたりに近づけた。口の中で呪文を唱えると手のひらがぼんやりと光る。毒素浄化の魔法だ。
リスクは来たときと同じように魔法を使って老夫妻の家の寝室に戻り、何食わぬ顔で朝食の支度を手伝っていると老人が帰ってきた。
「ばあさん、こんな話を聞いたことがあるかね? まだらヘビにやられた人間が自力で治っちまったんだよ」
「まあま、なんの話です?」
「皇太子様がまだらヘビにやられなすってな、医者はいないし薬もないっていうのに、皇太子様は三時間ほど苦しみなすっただけで快方にむかってらっしゃるんだ」
「そんな話がありますか。きっと何かお薬を持ってらっしゃったんですよ」
「それがなあ…」
パイプに火をつけ、椅子に腰かけながら老人は眉を寄せた。
「皇太子様は、金髪で長い白い服の女性が御自分を救ってくれたとおっしゃってるんだと」
ガチャン!
「おい? 大丈夫かい?」
「どうしたの? まだ眠いんじゃないかい? 疲れてるんだろ?」
リスクはあわてて皿を取り、割れていないのを確かめた。
「いえ、ちょっと手がすべって…」
意識がないようだったのに、皇太子は見掛けより頑丈な身体をしているようだ。とにかく髪の色も違うし男のふりをしているし、自分だとばれることはないだろう。
老人は話を元に戻した。
「ま、それでしばらく養生のために領主の館に滞在なさるそうでな。後で手伝いに行かにゃ」
「あら、でも畑の種蒔きは…」
「しょうがないさね」
「あの…」
リスクが口をはさんだ。
「領主の館には、僕がかわりに手伝いに行きます」
「ええ? でも疲れてるんだろ」
「皇太子様の一行を見るチャンスなんて滅多にありませんし、行かせてください」
そしてリスクはおばあさんの作ってくれたお弁当を持って、畑に行くおじいさんに連れられて領主の館に出向いた。
「おや、ジェイクじいさんじゃないか」
忙しそうに立ち働く人々の中の使用人頭らしい人が二人に目をとめた。
「手伝いにきてくれたのかい? 御苦労さん」
「わしの代理で…」
その後をリスクが受けた。
「リスク=ヴァ…ヴァトレーゼ、です。ジェイクさんの家でお世話になってます」
ヴァンデッドの名を知るものは少なくなったとはいえ、どこで聞かれるかわからない。クラウディアの姓は、リースという本名を使うときにしか名乗りたくなかった。
「そうかい、それじゃ頼むよ。若いのが欲しかったんだ。皇太子様のお相手には、やっぱり年の近い方が良いだろうと思ってね」
げ。
一瞬ヤバいと思ったリスクだったが、すぐに王子は自分の本当の姿しか知らないことを思い出して胸をなで下ろした。
夕方に迎えにくるからと言って、ジェイク老人は帰って行った。
「じゃ、こっちにきてくれ」
「あ、はいっ」
台所の隅にお弁当をおいて、リスクはきょろきょろしながらついて行った。
こんなにたくさんの人を見たのは初めてだ。そして活気があり、騒がしく、活き活きとしている。
「おいおい、そんなによそ見するとぶつかるぞ」
笑いながら言われ、リスクは赤くなって笑った。
だって初めてだ。こんなうきうきする感じ。
浮かれていたリスクだが、庭の奥のあずまやに数人の人影を認めて気を引き締めた。
「皇太子様、御気分はいかがでしょうか」
クッションを乗せた椅子に座っている少年のような王子は、使用人頭とリスクを見て笑った。とても優しそうに笑う人だ、とリスクは思った。
「とてもいいよ。ありがとう」
「皇太子様の身の回りのお世話をいたします、リスク=ヴァトレーゼです」
リスクはぺこりと頭を下げた。
皇太子の左右に控えている男の一人は、あのツェルサームだった。その足もとにリスクに吠え掛かった犬がうずくまっている。そしてリスクに気がつくと、むっくり起き上がってとことこと近寄ってきた。
ツェルサームともう一人、そして王子までもが身をこわ張らせた。
「アンバー!」
ツェルサームが止める暇もなく、犬はリスクに飛びかかった。そしてペロペロとその顔をなめる。
「わかった、わかったよ! 遊ぶってば」
笑いながらリスクはその大きな犬をなだめた。リスクが小柄なこともあり、アンバーのような大きな犬に飛びかかられると倒れそうだ。
驚いた顔でツェルサームが言った。
「驚いたな、我々にしかなつかなかったアンバーを…」
「オレ、動物に好かれるんですよ」
「その犬は狼との混血らしくて気が荒いんだ」
ツェルサームとは逆の方に立っている人物が言った。こちらは対照的に、繊細で知的な様子をしている。
本物の狼でさえなつかせたリスクは、笑っただけだった。賢者以外の遊び相手といえば、森の動物しかいなかったのだ。
「君はどこの出身だ?」
「どこと言われても…山奥ですよ、すっごく」
「発音が昔風だ」
「すっっごい山奥でしたからね」
人里離れたもいいところだ。
「私はギオールだ」
と、男は片手を差し出した。
「よろしく」
それをにぎり返してリスクは言った。
「オレはツェルサーム」
ツェルサームの握手は力強かった。これでも本人は加減しているのだろう。
「私はアレックス・ル=ヴァントーレ。みんなはアレクと呼んでくれる」
「よろしくお願いします、皇太子殿下」
皇太子は笑った。
この笑い方は好きだな。
リスクはなんとなくそう思った。
「アレクでいいさ。四六時中側にいてもらうのに、そんな言い方をしていたら疲れるだろう」
また型破りな王子様である。ギオールもツェルサームも慣れているらしく何も言わない。
使用人頭は忙しそうにどこかへ行ってしまった。
アンバーと遊んでいると、ツェルサームが言った。
「お前、本当に山奥から出てきたのか?」
「そうですよ」
「…ふーん」
皇太子などという身分の高い人物を前にして、リラックスしているのが納得いかないらしい。リスクにしてみれば、賢者や前代ヴァンデッドのような威厳のある人物とずっと一緒だったので平気なのだ。
やがて昼になり、リスクは皇太子の食事の給仕をした。天気が良いのであずまやで食べることにしたのだ。
「リスクは食事しないのか?」
「後でいただきます。お茶のお代りはいかがですか?」
ギオールが無言で空のカップを差し出した。
王子達の食事がすんで、食器を台所に運ぶとアンバーが後からついてきた。リスクはおばあさんの持たせてくれたお弁当を台所の隅で広げた。
アンバーが欲しそうに鼻を鳴らしたので、チーズをはさんだ黒パンのサンドイッチを半分わけてやった。
「え…っと、リスク、だっけ?」
使用人頭が少し離れたところから声をかけた。アンバーが怖くて近寄れないのだろう。
「はい?」
「悪いが、午後からは別のことをやってくれないか?」
「いいですよ」
「すまないな、広間の掃除の手が足りないんだ」
『ふん、領主の娘がアレクの世話をするだけのことだろ』
驚いてリスクは周囲を見回した。
誰もいない。
…空耳?
「広間に案内するよ」
「あっ、はい」
リスクは使用人頭の後について行った。
この館の何倍もある魔法使いの城の掃除をしていたリスクには、広間の掃除ぐらいはなんでもない。
張り切ってモップを動かしていると、出入り口のところから女の人が手招きしているのに気がついた。
「なんでしょうか」
「リスク=ヴァトレーゼってあなた?」
服装からしておそらく領主の娘だろう。狩りに同行してきた人達は、一足先に都へ帰ったと聞いた。
「そうです」
「アレクが呼んでいるの。来てちょうだい」
ついて行くと、あずまやには王子しかいなかった。
「ああリスク、アンバーを知らないか」
「いえ…昼食の後から見ていませんが」
「そうか…」
心配そうに目を伏せる。
「いないんですか」
「そうなんだ」
「捜してきます」
言葉すくなにそう言って、リスクは足早に立ち去った。裏井戸へ行って、人がいないのを確かめる。
「ジ・ラース・ウィード・デ・ミース・ウィード」
失われし言語だけで構成された呪文は、今では魔法使いの城にしか残っていない。
やがて、リスクの足もとの水溜まりにアンバーが映った。納屋の奥にうずくまっているが、具合が悪いわけではなさそうだ。
リスクは走って納屋に行った。今は使われていない納屋は、今にも崩れそうである。
「アンバー?」
アンバーは、真っ黒い塊のようだった。
リスクはその側まで歩み寄り、ひざまずく。
「どうした? アンバー。なにスネてんだよ」
アンバーはうずくまったまま、ぷいとむこうを向いた。
「アンバーってば」
『キスしてくれたら機嫌を直してやっても良いぞ』
まただ。
リスクはあわてて周囲を見た。やはり誰もいない。
アンバー…? まさかね。でも…
ものは試しとリスクはアンバーの頭に軽くキスした。
アンバーはいきなり頭を起こし、リスクを見た。
『リスク…オレの声が聞こえるのか?』
「え…っ…やっぱり…アンバー!?」
その瞬間、アンバーの身体が変化した。正しくは変身と言うべきだろう。人間、に。
「あ…」
黒髪と黒い瞳、そして真紅の服をまとった青年。
「あん…ばー…?」
「そうだ」
憮然とした表情の青年は言った。そして思わず逃げ腰になるリスクの手首をつかむ。
「お前は何者だ? オレはアンバー。アンバー=リーデル。かつて“赤のリーデル”として名を知らしめた魔法使いだ」
赤のリーデル!
その名はリスクの記憶のなかでも、超上級魔法使いとして上位にランクされている。その強大な魔力によって人の世を治め、半分までを手中に入れたところで当時のヴァンデッドと八賢者によって犬の姿に封印されたという。
ヴァンデッドのキスにはすべての封印を解く力がある。それにしても、まさかアンバーが赤のリーデルだったとは、誰が想像しえただろう。
「アンバー…リーデル…」
「オレは正体を明かしたぞ。今度はそっちの番だ」
「オレ…は」
どうしよう。言うべきだろうか。どこまで?
「おーい! アンバー!」
「アンバー!」
ギオールとツェルサームの声だ。そう思うと同時にアンバーは犬の姿になっていた。今度は自分の魔法で姿を変えたのだ。
「お、リスク」
「アンバー、いましたよ」
「おおよかった。アレクが心配しておられる」
ギオールも気がついてやってきた。
「よく見つけられたな」
「言ったでしょ? 動物には好かれるんです」
けろりとしてリスクは言ったが、なんとなくギオールは苦手だった。決して嫌いではないのだが、何もかも見透かされそうな気がする。
三人がアンバーと王子のところへ行くと、王子はほっとしたような顔で笑った。
アンバーもこの笑い方が好きで王子の側にいるのかな。
なんとなくリスクはそう思った。
「御苦労だったな、三人とも」
「いえ、我々は何も。リスクが見つけてくれましたから」
ツェルサームが言った。
「そうか。ありがとう、リスク」
ぼんやりとアンバーを見ていたリスクは、我に返って赤くなり、あわてて一礼してその場を立ち去った。
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